YUMI KORI ART WORKS

Mirage Stairs

Various locations in Osaka, Japan, 2024

住まいの中に静かに侵入し、不条理劇のように日常の見え方を変え、生活者の無意識に「さりげない違和感」で働きかける。 「手続き型建築」のモックアップ「蜃気楼階段」は建築で人間を変えるための装置。 これは、持ち運びできる建築/空間装置である。 人の身体感覚に訴えかけ、空間認識を問い直し、日常に新しい風をもたらすことを考え、住宅に設置するモジュールとしてデザインした。
人体寸法を基準に作ってあるので、最小限の個室、寝室にもなることを想定した。
外観は見る方向によって見え方が変わる。鏡の壁には周りの景色が映り込み、その存在が不確かに見え隠れし、反対から見れば実態のある物体に見える。
また、装置の上に上がってみると視点が変わる。
日常がいつもとは違って感じられ、気分も変わるだろうか。ドアを開けて中に入ってみると無限につながる空間の中で、自分の空間認識が変化していくことを楽しんでくれるだろうか。住民が生活の中でこの装置を創造的に使ってくれたらいいなと思う。
また、これは通常の階段とは違い、建築本体と切り離され、上階と下界をつなげるという本来の機能が失われている。住人がその時々にその使い方を発見し、椅子、展望台、ステージ、間仕切り壁、姿見、隠れ家など、使い方によって呼び方が変わるといいなと思う。
人間は、常に環境と溶け合いながら新しい身体に生まれ変わっていく。いくつもの自分が作られていく。
階段は通常、表側と裏側、2つの違う空間を持っている。そしてそのふたつの世界は出会うことがない。しかし、今回はその接点である踏板の種類を様々に変えることで内外の関係性を変え、同時に内部環境を様々に変化させることを考えた。
この展覧会では、自然光、緑の光、荒川修作の「三鷹天命反転住宅」で使われた14色、漆黒の闇、など種類の光のバリエーションを楽しめるパーツを作った。黒の板に変えてみると、空間は漆黒に染まり、空間は無限に広がる闇になる。



■関西大学 吹田みらいキャンパスに設置された「蜃気楼階段」




■実験集合住宅 NEXT21(大阪ガス)の住戸内に挿入された「蜃気楼階段」
蜃気楼階段を体験するワークショップを数回行なわれた。




2024年から2025年にかけて蜃気楼階段は、様々な場所を旅しました。

ワークショップとレクチャーの動画はこちらのリンクにあります。
(実験集合住宅 NEXT21, 2025年3月)
https://www.studio-myu.com/blog/archives/2022/

蜃気楼階段の解体・組み立て風景はこちらをご覧ください。
(関西大学 吹田みらいキャンパス, 2024年10月)
https://www.studio-myu.com/blog/archives/1950/

住宅の内部に設置された様子はこちらをご覧ください。
(実験集合住宅 NEXT21、2024年7月)
https://https://www.studio-myu.com/blog/archives/1927/

大阪工業大学 梅田キャンパスでの展示の様子はこちらをご覧ください。
https://www.studio-myu.com/blog/archives/1802/



「蜃気楼階段」
– 荒川+ギンズ「手続き型建築」の形態を探る モックアップ として–

材料: シナ合板、アクリル塗装、ファイバーグレーチング、アクリル板、カッティングシート、アクリミラー、硬質ウレタンフォーム

設計: 郡 裕美 + 大阪工業大学 空間デザイン学科 郡裕美研究室
制作: 大阪工業大学 空間デザイン学科 郡裕美研究室、株式会社 越智工務店
主催: 荒川+ギンズ モックアップ研究会(空間と身体感覚の相互作用にもとづく空間デザインの研究)
    2023年度関西大学研究拠点形成支援経費採択課題
協力: 大阪工業大学、京都芸術大学、関西大学、スタジオ宙、
    荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所、大阪ガス株式会社、
協賛: 株式会社 中川ケミカル(タフカル, イロミズ, カッティングシート)
    三菱ケミカルインフラテック株式会社 (アクリミラーMS)
    三菱ケミカル株式会社(アクリライトL)
    株式会社 ダイクレ(FRPグレーチング)