UTSUSHI・YO
Minosan Ryuanji Temple, Osaka, Japan
2025.11.15 – 11.30
Materials :アクリミラー、シナベニア、オスモクリア、木材、アクリルペイント
Dimensions:12.0m×4.0m×2.7m
水面に映る世界は、極楽浄土かそれとも現実世界か?
空、光、風、箕面の自然は、何を応えてくれるだろう。
箕面瀧安寺鳳凰閣の広間を阿字池に見立て、真ん中に「浮島」を作りました。景色が「水面」に映り込み、「浮島」は箕面の自然の中に浮遊しはじめます。現世と書いて「うつし・よ」と読みます。「浮島」は、光が屈折して遠くの景色が上下反転し、遠くの島が海面に浮いて見える蜃気楼の一種です。瑞雲橋に見立てたブリッジで「浮島」へ渡り、「水面」に映り込む空、光、風、箕面の自然を楽しんでください。
この作品が生まれるきっかけは、この建物の屋根の上に載っている赤い楼閣を不思議に思って調べてみた結果、建築家武田五一が設計に際して「平等院の鳳凰堂の『気分』を表現した」という記述を文化庁の文化遺産オンラインで発見したことでした。そこで、平等院鳳凰堂の建築の「気分」について考察してみました。そして、「水面に映った鳳凰堂の虚像を各自が見ようとすることを通して、見た人それぞれの心の中に極楽浄土が立ち上がる」建築的な仕掛けに興味を抱き、その仕掛けを瀧安寺鳳凰閣の広間で再現する作品をつくろうと考えました。
平等院の池の中に浮かぶ中島へと渡る橋は、「現世と浄土、生と死、迷いと悟りをつなぐ象徴」とされていますが、今回の作品では、「うつし・よ」へ至るブリッジは、箕面川にかかる朱塗の瑞雲橋に見立てました。めでたいことの前兆として現れる瑞雲に見立てることで、「うつし・よ」に訪れることが、幸せな時間に出会うための道行きになることを考えました。
かつて極楽浄土図には、西方浄土への思いをこめて宙に浮かんだ楼閣が描かれました。極楽浄土図も平等院も、肉眼では見えない極楽浄土を視覚芸術や建築で表現しようとした試みです。建築家の武田五一が「平等院の鳳凰堂の気分」を表して設計したとされる建築の中で、かつての平安貴族が思い描いた極楽浄土に想いを馳せ、鑑賞する皆様は、「水面」に映り込んだ景色を見ながら、それぞれの心の旅をしてみてください。
● 概要
箕面の森アートウォーク2025
会期:2025年11月15日(土)〜11月30日(日)
会場: 箕面山 瀧安寺 鳳凰閣、庫裡跡地
● コンセプト説明
さて、今回の会場である鳳凰閣の外観を見て何か思いませんか?
そうです。あの十円玉硬貨に使われている宇治の平等院鳳凰堂に似ているじゃないですか。
それもそのはず武田五一は、宇治の平等院の修復をした設計者なのです!
よく見ると、本体に少しずれた形の赤い建築は、まさにうちの平等院の雰囲気!
箕面瀧安寺鳳凰閣の外観。赤い楼閣が宇治の平等院の雰囲気を感じます。
本体と少しずれた軸線で作られているのに設計者の遊び心を感じます。
まるで、箕面山に「宇治の平等院」がふわりと飛んできたかのようです。
以下、文化庁のホームページに載っている箕面瀧安寺鳳凰閣の説明文です。
この鳳凰閣の国の指定文化財の説明に、面白いことが書いてあります。
「宇治の平等院の気分を表現している」というのです。
普通、文化財というと、構造形式や様式について語られるものですが、
建築の「気分」について説明があるのは、本当におもしろいです。
さて、それでは、宇治の平等院の復習をしてみましょう。
こちらが、宇治の平等院の写真。
水面に映った左右対称の朱塗の建築、なんと美しいことでしょう。
宇治の平等院鳳凰堂は、平安時代中期に藤原道長の子である藤原頼通によって建てられ、日本の10円硬貨にも使われるなど日本文化の象徴的な建築として国宝にも指定されています。池の中島に建つ朱塗りの鳳凰堂が阿字池の水面に映る様は、西方極楽浄土の世界を現世に再現する表現だと言われています。水面に映った虚像を各自が見ようとすることを通して、心の中に極楽浄土が立ち上がってくるという仕掛けです。
平等院鳳凰堂は、水面に映った姿を通して、
実際には見えない極楽浄土を表すというコンセプト。
水に移った橋を想像の中で渡り、
実際には存在しない極楽浄土の世界を想像して、
平安貴族は心の安息を得たのでしょうか。
そこで、箕面山鳳凰閣でもそれを再現できないか、、、と、
鳳凰閣の前に想像の池を写真コラージュで作ってみました。
想像の水に映る瀧安寺鳳凰閣、
そのアイディアを発展させて考えついたのが、このインスタレーション案です。
下は、鳳凰閣の広間の写真ですが、
ここから美しい箕面山の景色が楽しめます。
そこで、広間の部屋を池に見立て、その中央に「浮島」を作ることにしました。
外周に鏡を敷き詰めれば、そこに箕面の美しい景色が映り込むことでしょう。
美しい景色の中を浮遊しながら、
現世と極楽浄土の間を彷徨う時間を過ごしてほしい。
作品のタイトルは、現世とかいて「うつしよ」と読むことから、
「うつし・よ」というにしました。
夢のように美しい紅葉の箕面山の風景が映り込む中で、
かつて極楽浄土を夢見た平安貴族に想い馳せてほしいと思いました。
終活という言葉が流行し、人々は自らの死を現実的な問題として理性的に受け止めることを強いられています。もちろん死は避けられない事実ではありますが、受け止め難いものでもあります。極楽浄土図も平等院も、肉眼では見えない極楽浄土を視覚芸術や建築で表現しようとした試みです。それによって人々に亡くなる瞬間の安らぎを与え、死後への不安を和らげる役割を果たしたと考えられます。かつての平安貴族が思い描いた極楽浄土への想いを馳せながら、しばしこの空中楼閣で幻の時を過ごしていただければいいなと思います。
かつて極楽浄土を夢見た平安貴族に想い馳せてほしいと思いました。
今回の建築インスタレーション作品の制作は、ワークショップ形式で学生やボランティアの方々と一緒におこないました。床の畳をあげて荒床の上にミラーを置くことで、広間を池に見立てるという簡単な仕掛けですが、ちょっとした操作で、空間がガラリと変わる様子を体験したり、本畳の重みを直に感じたり、学びの多いワークショップになりました。
作品の中でスナップショットを撮影。
夜になると、外の景色が見えなくなり、床の水面に障子や天井などが映りこみます。垂直水平しかない格子が基本になってできている和室では、天地左右が逆さまになっても成り立つ不思議な建築。まるで映画のマトリックスのような世界になりました。
● 作品制作:ワークショップ形式で制作
郡裕美、持井英敏、中村翔太、奥村収一、本多翔希、
大阪工業大学+大阪工業技術専門学校+関西大学+京都工芸繊維大学 学生有志
● 協賛・協力:
三菱ケミカル インフラテック株式会社、新興プラスチックス株式会社、株式会社総合資格、
株式会社越智工務店、オーロラソース、株式会社スタジオ宙、一般社団法人 空間芸術文化研究機構